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店頭とネットの両方で売る店で、いちばん多い困りごとは在庫のずれです。棚に一点しか残っていない商品に、ネットから注文が入る。この売り違いをどう避けるかが、小売の道具選びの中心になります。
この記事では、実店舗を持ちながらネット販売も始めた(始めたい)小売店を想定して、レジ・ネットショップ・在庫の関係を整理します。道具選びの進め方そのものが定まっていないなら、最初に決める5つのことを先に読むと迷いが減ります。
在庫が合わなくなる原因は、たいてい入力の場所が複数あること
在庫が合わない原因は、数え間違いよりも、記録する場所が二つ以上あることにあります。片方で減った数が、もう片方に伝わっていない状態です。
店頭とネットで売れた分が、別々に記録されている
店頭で売れればレジに記録が残り、ネットで売れれば注文の画面に残ります。別々の記録なので、どちらも自分が知っている分しか数を減らせません。
売り違いが起きるのは、この差が開いた瞬間です。店頭で最後の一点が売れてから、ネット側の在庫を減らすまでの間に注文が入れば、渡せない商品を受け付けたことになります。
- 店頭で売れた分を、ネット側で減らし忘れる
- ネットで売れた分を、店頭の棚から取り置きしていない
- 取り寄せ・入荷待ちの分と、いま店にある分を同じ数で並べている
- 返品や交換で戻った分が、どちらの在庫にも足されていない
「1日1回まとめて直す」運用が破綻する規模
始めたばかりの店では、閉店後にネット側の在庫を直す形でも回ります。売れる数が少なければ、直すまでの間に注文が重なる場面が起きにくいためです。
この運用が崩れるのは、次のどれかが起きたときです。
- 同じ商品が、店頭とネットの両方で同じ日に動くようになった
- 一点もの、または残り数点の商品を扱うようになった
- セールや紹介がきっかけで、短い時間に注文が集中した
- 店頭とネットの担当が分かれ、口頭では伝わらなくなった
裏を返せば、これに当てはまらない間は手で直す運用で足ります。動く量が少ないうちに連携の仕組みを入れると、費用と設定の手間だけが先に増えます。
売り違いは数ではなく、時間差で起きる
どれだけ丁寧に直しても、直すまでの間は古い数が表に出ています。見るべきは在庫の正確さより、「どのくらいの時間差なら許せるか」です。
レジ・ネットショップ・在庫の関係を整理する
道具を比べる前に、売れる入口はどこか、数が減る記録はどこか、それを誰がいつ直すかを、紙一枚に書き出します。
どこを在庫の正とするかを最初に決める
在庫の正とは、数が食い違ったときに「こちらを信じる」と決めておく場所です。ここが決まっていないと、ずれるたびにどちらへ合わせるかで迷います。
小売での合わせ方は、大きく三通りです。扱う量によって、向き不向きがはっきり分かれます。
| 合わせ方 | 向いている状態 | 手間の出かた |
|---|---|---|
| 分けて持つ(ネット用を棚から切り分ける) | 受注が少なく、在庫に余裕がある | 切り分けた数を定期的に見直す |
| 連携する(どちらかを正にして自動で合わせる) | 同じ商品が店頭とネットで日常的に動く | 商品コードの整備と初期設定に時間がかかる |
| 手で直す(決めた時刻に人がそろえる) | 扱う点数が少なく、動きがゆるやか | 担当と時刻を決めないと、すぐ止まる |
分けて持つ方法は、売り違いをいちばん確実に防げます。ネットに出す分を棚から抜いておけば、店頭でどれだけ売れても影響しません。その代わり、抜いた分は店頭で売れなくなります。
連携がいつでも上位というわけではありません。動く量が少ない店では、切り分けか手直しのほうが、費用も覚えることも少なく済みます。連携しないという判断は、後ろ向きな妥協ではなく規模に合った選択です。
連携の対応表を作ってから、契約する
連携という言葉は幅が広く、つながる範囲はサービスごとに違います。契約の前に、何と何が、どちらの向きに、どのくらいの間隔で流れるのかを表にしてください。
- 在庫の数(どちらからどちらへ流れるか/自動か手動か)
- 商品の情報(名前・価格・画像・説明文のどこまでが同じになるか)
- 注文の情報(ネットの注文が、レジ側の売上として入るか)
- 顧客の情報(店頭の会員とネットの会員を、同じ人として扱えるか)
- 反映の間隔(売れた直後か、決まった時刻ごとか)
「連携できます」と説明された項目でも、向きが片方だけだったり、反映が一定の間隔ごとだったりします。案内の言葉ではなく、この表の形で回答をもらってください。
レジ側の選び方はキャッシュレス決済とレジの選び方に、ネットショップの開き方はホームページ・ECの記事にまとめています。
ネットショップ側で見る項目
ネット販売の道具は、月額だけを見ると安く見えます。売れるたびに引かれるものがあるため、手元に残る額は別の計算になります。
販売手数料・決済手数料・月額の合計
ネット販売の費用は、三つの層でできていることが多いです。
- 月額(固定でかかる利用料。無料のプランがあるなら、その条件と上限)
- 販売手数料(売れた金額に応じて引かれるもの)
- 決済手数料(支払い方法ごとに引かれるもの)
ここに送料と梱包材、売上を受け取るときの費用が加わります。比べるときは、全部を同じ条件でそろえて一年分にします。手順は年間の総額で判断する記事にあります。
月額が無料な代わりに売れたときの手数料が高い形と、その逆の形があります。どちらが有利かは、扱う点数と売れ方によって入れ替わります。
商品データと注文データを書き出せるか
商品の登録は、思っているより時間のかかる作業です。写真も説明文も価格も一点ずつ入れるため、この積み重ねがそのまま乗り換えのしにくさになります。
- 商品の情報を、まとめてファイルで書き出せるか
- 注文の履歴を、期間を指定して書き出せるか
- 画像は書き出しに含まれるか、別に保存が必要か
- 解約したあと、データを取り出せる期間が残るか
出口の条件は、契約の前に確認しておきます。解約のときに何を持ち出せるかは契約・解約の記事で扱っています。
受注から発送までの手間を減らす
注文が入ってから商品が届くまでには、小さな作業がいくつも並びます。自動になりきらない部分が残り、件数がそのまま作業時間になります。
送り状の作成と、配送料の設定
受注から発送までを並べると、手作業として残るのはだいたい次の場所です。
- 注文の内容を確かめて、受け付けたことをお客さまへ知らせる
- 棚から商品を取り、傷まないように梱包する
- 送り状を作って貼る
- 発送したことと、追跡番号をお客さまへ連絡する
このうち機械に任せやすいのは、受け付けの知らせと送り状の作成です。注文の情報から送り状を作れる形にすると、宛名を書き写す時間と、書き間違いが同時になくなります。追跡番号も、送り状を作った流れでそのまま連絡できる仕組みがあります。
残るのは梱包です。ここは道具では短くならないため、材料の置き場所と手順で詰めます。よく出る商品のサイズごとに箱と緩衝材を決めておくと、迷う時間が消えます。
配送料の決め方も先に固めます。全国一律か、地域や重さで変えるか、一定額以上を無料にするか。ここが曖昧だと、注文のたびに計算し直すことになります。
返品・交換の手順を先に決めておく
返品と交換は、起きてから考えると時間がかかります。決めておくのは、受け付ける条件、連絡の方法、送料をどちらが持つか、戻ってきた商品の扱いの四つです。
忘れやすいのは最後です。戻った商品を棚に戻したとき、店頭とネットの両方の在庫に足されているか。ここが抜けると、ずれが少しずつ積み上がります。
契約前に確認
ネット販売では、事業者の情報や返品の条件を表示することが法令で求められます。何をどう書くか、個別の対応が適法かどうかの判断は、所管の窓口や専門家にご確認ください。
モールに出すか、自分の店を持つか
ネットで売る場所には、人が集まる場所に出店する形と、自分の店を構える形があります。どちらが正しいというより、何を払って何を得るかの違いです。
集客力と手数料は交換関係にある
人が集まる場所には、探しているお客さまがすでにいて、開いた初日から見てもらえる可能性があります。その代わり、売れたときに引かれるものが大きくなりやすく、隣には似た商品が並びます。
自分の店は、引かれるものを抑えられる一方で、来てもらう工夫を自分で用意します。店頭の案内、チラシ、SNS、既存のお客さまへの連絡など、呼べる手段があるかで結果が変わります。
- 探している人が、すでにその場所にいるか
- 売れたときに引かれるものが、どのくらいか
- お客さまの連絡先が、自分の手元に残るか
両方やる場合の、在庫の持ち方
両方に出すと、売れる入口が三つ(店頭・自分の店・出店先)になります。手で直す運用のまま入口を増やすと、直す先が増えた分だけ売り違いが起きやすくなります。
現実的なのは二通りです。
- 出店先には在庫を切り分けて出す(数を絞り、なくなったら販売を止める)
- どこか一つを在庫の正と決めて、全部をそこへ合わせる仕組みを入れる
始めたばかりの店が、両方に同じ商品を全部出そうとするのがいちばん危ない形です。まずは切り分けで様子を見て、動く量が増えてから仕組みを考えます。
ネットショップ
レジ(POS)
どちらかを在庫の正と決め、もう一方をそこへ合わせる形です。合わせる向きと反映の間隔を契約前に確かめ、合わなければ在庫を切り分ける方法にします。
小さく始めるときの順番
最初から全部の商品をネットに出す必要はありません。順番さえ間違えなければ、道具も費用も後から足していけます。
売れ筋だけを先にネットへ出す
先に出すのは、店頭でよく売れていて、数をそろえられて、送りやすい商品です。この三つが重なるものから始めると、梱包も配送料も決めやすくなります。
- 店頭でよく動いている(長い説明がなくても売れる)
- 同じものを複数そろえられる(一点ものは後回しにする)
- 壊れにくく、決まった大きさの箱に収まる
逆に、一点ものや残りわずかの商品は、売り違いがいちばん起きやすいものです。在庫を切り分けるか、注文を受けてから在庫を確かめてご連絡する形にしておくと安全です。
月の受注件数が増えてから、連携ツールを足す
連携の仕組みは、入れた瞬間に手間が消える道具ではありません。商品コードをそろえ、対応表を作り、動きを試す時間が最初にかかります。
足す目安は、件数そのものより次のような状態になったときです。
- 閉店後の在庫直しが、毎日の負担として居座っている
- 売り違いによる取り消しが、繰り返し起きるようになった
- 商品の入れ替えが早く、直すそばから古くなる
設定と移行の順番は初期設定・データ移行の記事にまとめています。売上を帳簿へ渡す形は会計ソフトの選び方をご覧ください。ネットの売上は店頭と入金の間隔が違うため、帳簿側で分けて見られる状態にしておくと後が楽です。
なお本サイトでは、料金を総額で示すこと、向かない場合も書くこと、広告を含むときは明記することを方針にしています。
うまくいったかどうかは、在庫のずれでお詫びする回数と、注文から発送までの手数で見ます。この二つが減っていないなら、その道具はまだ店に合っていません。手を付ける場所で迷ったら、かんたん診断もご利用ください。
よくある質問(FAQ)
-
店頭とネットの在庫は、必ず連携させるべきですか?
動く量が少ないうちは、連携しない選択も現実的です。ネットに出す分を棚から切り分けておけば、そもそも売り違いが起きません。同じ商品が両方で日常的に動くようになってから検討します。
-
売り違いが起きてしまったときは、どう対応しますか。
事実を早く伝え、取り消しか入荷待ちかをお客さまに選んでいただく形が基本です。あわせて、どの経路で起きたかを記録し、繰り返すならその商品だけ在庫を切り分けます。
-
在庫管理の専用ソフトは必要ですか?
扱う点数が少なく、レジかネットショップのどちらかで在庫を見られているなら不要です。仕入れ先が複数あり、入荷予定まで管理したくなった段階で検討します。
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発送の作業を減らすには、何から手を付けますか。
送り状の作成です。注文の情報からそのまま作れる形にすると、書き写しと書き間違いが同時に消えます。梱包は道具では減らないため、箱と緩衝材の型で短くします。
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ネットの売上は、店頭の売上と分けて記録すべきですか?
分けて見られるようにしておくのが安全です。入金の間隔や引かれる費用が店頭と違うためです。仕訳や税務上の扱いは、税理士や所轄の税務署にご確認ください。

