棚卸しのやり方|数え方を先に決めて、在庫が合わないときに直す手順

棚卸しのやり方|数え方を先に決めて、在庫が合わないときに直す手順

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棚卸しは「面倒だけれど、やらないといけないもの」として扱われがちです。ただ、毎回そこそこ数が合わないまま終わっているお店では、数えること自体が目的になってしまい、翌日からの仕事が何も変わりません。数えた時間のわりに、得られるものが少ない状態です。

この記事では、小売店や店販のある店を想定して、棚卸しの段取りを整理します。扱うのは、数える前に決めておくこと、当日の進め方、合わなかったときに直す手順です。棚卸資産の評価方法や、税務上の処理の判断には踏み込みません。個別の判断は、顧問の税理士や所轄の税務署へ確認してください。

目次

棚卸しは「数える日」ではなく「数え方を決める仕事」

棚卸しがうまくいかない店の多くは、当日の作業が下手なのではありません。数える前に決めていないことが多すぎて、当日に判断が発生してしまうのが原因です。判断の数だけ人によって答えが変わり、結果がぶれます。

何のために数えるのかを先に決める

棚卸しの目的は、店によって違います。決算に向けて手元の在庫の金額を出すためなのか、発注の精度を上げるためなのか、なくなっている商品を見つけるためなのか。目的が違えば、数える範囲も、数える細かさも変わります。

「とりあえず全部数える」から始めると、時間だけかかって何も判断できない結果が出ます。まず、この棚卸しで何を知りたいのかを一行で書いてから始めてください。

帳簿の在庫と、棚にある在庫は別物

仕入と販売の記録から計算した在庫と、実際に棚にある在庫は、基本的に一致しません。一致しないことが問題なのではなく、どれくらいずれているか、なぜずれたかを知らないまま運用していることが問題です。

棚卸しは、この二つを突き合わせる作業です。突き合わせる相手がない状態、つまり仕入や販売の記録が残っていない状態では、数えても比べるものがありません。記録の残し方は帳簿・領収書の保存とデータ化で整理しています。

全部数えるか、一部だけ数えるか

すべての商品を一度に数えるやり方と、動きの速いものだけを短い間隔で数えるやり方があります。後者は、棚や商品グループを区切って順番に回していく形です。店を止める時間を長く取れない店ほど、後者のほうが続きます。

扱う品目が少ないうちは全体を数えるほうが早く、品目が増えてきたら区切って回す形に変えるのが自然な流れです。どちらにしても、次にどの範囲を数えるかが決まっている状態にしておいてください。

ここだけは見る

数える前に、目的・範囲・単位・担当の四つを紙に書き出してください。当日にこの四つを相談し始めると、数え直しが発生します。

数える前に決めておく四つのこと

当日の作業を短くする準備は、ほとんどがこの四つに収まります。一度決めてしまえば、次回からは確認するだけで済みます。

数える単位をそろえる

箱で数えるのか、中身のひとつずつで数えるのか。ここがそろっていないと、同じ商品なのに人によって数字が変わります。仕入のときの単位と、レジで売るときの単位が違う商品は特に注意が要ります。

迷いやすい商品は、棚の値札や商品リストに「この単位で数える」と書いておくと、口頭の説明より確実です。

どこまでを在庫に含めるかを決める

判断が分かれるのは、売り場にない商品です。お客様の取り置き分、開封して使っている見本、返品待ちで戻ってきたもの、催事に持ち出している分、まだ検品していない届いたばかりの箱。これらを含めるのか外すのかを、毎回同じルールで扱います。

持ち出しがある店は、出した時点と戻した時点で記録が残る形にしておくと差が減ります。持ち出しの扱いはポップアップストア・催事出店の準備でも触れています。

数える人と、確かめる人を分ける

数えた本人が自分の数字を確かめても、同じ見落としを繰り返します。人数が足りるなら、数える人と、記録を突き合わせる人を分けてください。一人で回している店なら、数える作業と、帳簿と比べる作業を別の日に分けるだけでも見え方が変わります。

スタッフに任せる場合は、やり方を口で伝えるより、短い手順書を棚の近くに置くほうが定着します。進め方はスタッフに使ってもらうにはが参考になります。

当日の進め方|店を止める時間を短くする

棚卸しの当日は、正確さと速さのどちらかを取ることになります。優先するのは正確さですが、時間が読めないと次回から誰も協力してくれません。時間を短くする工夫は、当日の手際ではなく段取りで作ります。

売り買いを止める時間帯を決める

数えている最中に売れたり、荷物が届いたりすると、その分だけ数字が動きます。閉店後や開店前など、出入りが止まっている時間帯にまとめて数えるのが基本です。営業中に数える場合は、数え終わった棚から売り始めるなど、どこまで数えたかがわかる形にします。

記録の形を先にそろえる

紙に書くのか、スマホやタブレットに直接入力するのか。どちらでも構いませんが、途中で混ぜないでください。紙で数えてあとから入力する場合は、入力する人と数える人が別になる前提で、読み間違えない書き方を決めておきます。

バーコードを読み取れるレジやアプリを使っている店は、そちらのほうが早く、書き写しの間違いも減ります。レジ側の機能はキャッシュレス決済とレジの選び方で整理しています。

数え終わった場所に印をつける

複数人で数えるときにいちばん起きるのは、同じ棚を二回数えることと、どこも数えていない棚が残ることです。棚に付箋を貼る、リストの棚名を消していくなど、進み具合が目で見える形にしてください。

売り場とバックヤードに同じ商品が分かれて置かれている場合も、数え漏れの原因になります。保管場所ごとに紙を分けて、最後に合算する形にすると取りこぼしが減ります。

合わないときに、どこを疑うか

差が出たときに「たぶん盗まれた」「たぶん数え間違い」で片づけると、翌回も同じ差が出ます。原因は大きく三つに分かれるので、分けて考えると当たりがつきます。

数え方によるずれ

単位の取り違え、同じ棚の二重計上、数え忘れ、バックヤードの見落とし。差が大きい商品ほど、まずここを疑ってください。もう一度その棚だけ数え直せば、すぐに判明します。

数え直しても差が変わらないなら、数え方は原因から外して構いません。ここを先に切り分けておくと、残り二つの調べ方に集中できます。

記録によるずれ

レジを通さずに渡した分、スタッフが自分用に購入した分、値引きのときに別の商品として打った分、納品されたのに登録していない分。売上や仕入の入口が複数ある店ほど起きやすく、店頭とネットの両方で売っている店は特に注意が要ります。この整理は小売・ネットショップのツール構成で詳しく扱っています。

実物が減っているずれ

破損、期限切れでの処分、汚れによる見本回し、紛失。これらは記録に残らないまま減っていることが多い項目です。処分したときにメモを残す習慣がないなら、まずそこから始めてください。棚卸しの差が減らない店の多くは、この記録がありません。

契約前に確認

差の原因が人に関わる可能性が出てきたときは、棚卸しの結果だけを根拠に個人を問いただすことは避けてください。まず記録の入口を増やして、差が続くかどうかを見るほうが安全です。

直し方と、記録をどこに置くか

数えたあとの作業は、帳簿の数を実際の数に合わせることです。ここで雑に上書きすると、次回に同じ差が出ても気づけません。

まとめて上書きせず、理由ごとに分ける

差の合計だけを直すのではなく、「処分した分」「記録漏れの分」「原因不明の分」に分けて残します。原因不明の分だけを追いかければよくなるので、次の棚卸しが楽になります。

残し方は、表計算の一枚でも、ノートの一行でも構いません。日付と商品名と差の理由が並んでいれば十分です。同じ商品が何度も出てくるようなら、その商品の扱い方そのものに原因があります。

在庫の正をどこに置くかを決める

レジのソフト、表計算、発注のノート。在庫の数字が複数の場所にあると、どれを直せばよいかで迷います。正とする場所をひとつ決め、ほかはそこから写すだけにしてください。レジを入れ替えるときに在庫データをどう引き継ぐかはレジを入れ替えるときの進め方にまとめています。

会計側へ渡すのは金額の情報

日々の在庫の数は店の運用で持ち、決算のときに必要な在庫の金額だけを会計側へ渡す、という分け方が小さな店では扱いやすいです。会計ソフトに商品ごとの在庫を持たせようとすると、入力の手間が増えて続きません。会計側の選び方は会計ソフトの選び方を参照してください。

続けられる形にするために

棚卸しは一度きりの行事ではなく、繰り返して精度が上がる作業です。最初から完璧を目指すと、負担が大きすぎて続きません。

はじめの数回は、合わせることを目的にしない

最初の何回かは、差が出て当たり前です。そこで落ち込むより、どの商品でどんな理由の差が出たかを集めてください。理由の一覧ができれば、記録の入口をどこに足すべきかが見えてきます。

差が減り始めると、棚卸しにかかる時間も短くなります。原因がわかっている差は調べ直す必要がないためです。時間が短くなったかどうかは、精度が上がってきたかの目安になります。

動きの速いものだけ、間隔を短くする

差が出やすいのは、よく売れるものと、単価が高いものです。全体の棚卸しは決められた時期に行い、この二種類だけは短い間隔で数える形にすると、負担を増やさずに精度が上がります。店販を扱うサロンでの回し方はサロンの店販を始めるときの管理でも触れています。

手順を書き残して、次の人に渡せるようにする

単位の決め方、含める範囲、数える順路、印のつけ方。一度決めたものを紙一枚にまとめておけば、次の棚卸しは準備から始めなくて済みます。担当が変わっても同じ結果が出る状態が、棚卸しの完成形です。小売の運用については小売・ネットショップの記事一覧もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

  • 棚卸しは何のためにやるのですか。

    帳簿の上の在庫と、実際に手元にある在庫を突き合わせるためです。決算に向けて在庫の金額を出す目的のほか、発注の精度を上げる、減っている商品を見つけるといった運用上の目的があります。何を知りたいかによって、数える範囲も細かさも変わります。

  • 全部の商品を数えないといけませんか。

    目的によります。在庫の金額を確定させる必要がある場面では全体を数えることになりますが、日々の運用のためなら、動きの速いものと単価の高いものに絞って短い間隔で数えるやり方もあります。全体と部分を組み合わせている店が多いです。

  • 数が合わないとき、帳簿と実物のどちらに合わせますか。

    実際に棚にある数が事実なので、帳簿側をそれに合わせます。ただし合計だけを上書きすると原因が消えてしまうため、処分した分・記録漏れの分・原因不明の分に分けて残してください。

  • レジや在庫のソフトを入れれば、棚卸しは不要になりますか。

    不要にはなりません。ソフトが持っているのは記録された数であり、破損や紛失は記録に出てこないためです。ソフトを入れると数える作業と突き合わせは楽になりますが、実際に数える工程そのものは残ります。

  • 営業しながら数えても大丈夫ですか。

    数えている最中に売れたり納品されたりすると数字が動くため、閉店後や開店前など出入りが止まる時間帯が基本です。営業中に行う場合は、数え終わった棚から順に売り始めるなど、どこまで数えたかがわかる形にしてください。

  • 税務上の扱いはどう考えればよいですか。

    棚卸資産の評価方法や申告での扱いは、事業の形態や選択している方法によって変わります。この記事では運用の段取りのみを扱っています。個別の判断は顧問の税理士や所轄の税務署へ確認してください。

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