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紙のカルテ、ノートの名簿、表計算ソフトの一覧。顧客の情報は、気づくと何か所にも分かれています。どれが最新か分からなくなった時点が、見直す合図です。
この記事では、顧客管理のツールを選ぶ手順と、紙から移すときの進め方を整理します。特定のサービス名や金額は出しません。ツール選び全体の考え方は最初に決める5つのことにまとめています。
顧客管理を分けて考える(台帳・履歴・販促)
顧客管理という言葉は、指す範囲が広すぎます。必要な機能を見極めるために、まず3つに分けます。連絡先の台帳、来店や購入の履歴、販促のための配信です。
連絡先の台帳と、来店・購入の履歴は別物
台帳は、名前・連絡先・初めて来られた日といった、めったに変わらない情報です。一度入れてしまえば、あとは修正だけで済みます。
履歴は、来店のたびに増えていく情報です。いつ来て、何を選び、どんなご要望があったか。増え続けるため、入力の手間も毎回発生します。台帳だけなら表計算でも回りますが、履歴が積み上がると探す力が要ります。
販促(配信)まで求めると、必要な機能が増える
3つめの販促は、集めた情報をもとに案内を送る働きです。しばらく来ていない方へ連絡する、といった使い方です。
ここまで求めると、配信の機能や外部サービスとの連携が必要になり、月額も上がりやすくなります。まず台帳と履歴を整え、配信は後から足すほうが無理がありません。
どこまでデータにするかを先に決める
ツールを選ぶ前に決めるのが、何を記録するかです。ここが曖昧なまま導入すると、空欄の並んだ画面が残ります。
記録する項目を10個以内に絞る
まず紙に、記録したい項目を書き出します。項目はいくらでも増やせますが、増えた分だけ毎回の入力時間が伸びます。
- 必ず要る:名前、連絡先、初めて来られた日
- 次回に役立つ:前回の内容、担当した人、ご要望や苦手なこと
- 後から足せる:来店のきっかけ、記念日、ご紹介元
行動につながらない項目は、記録しても読み返されません。まずは10個以内に収める形が現実的です。
入力が続く形にする
1件の入力が長くなるほど、忙しい日には飛ばされます。項目を減らしたほうが、結果として記録は続きます。
手書きのメモを残したい場合の扱い(画像添付など)
紙のカルテには、手で描いた図や走り書きが残っています。これをすべて文字に打ち直すのは、手間が大きすぎます。
多くのツールには、写真やファイルを添える機能があります。紙のメモを撮って添付すれば、書き直さずに残せます。ただし、添付した画像は文字として検索できません。探したい情報だけを項目にして、残りは画像で添える形にします。
予約システム・レジに付いている機能で足りるか
新しく契約する前に、手元のツールを確認します。顧客管理の機能は、予約システムやレジに付いていることが多いためです。
すでに使っているツールの顧客機能を先に確認する
予約システムには、予約された方の名前と連絡先、来店の履歴が自動で溜まります。人が入力しなくても記録が残るのが利点です。
レジやキャッシュレス決済にも、会員登録やポイントの機能が付いていることがあります。まず両方の管理画面を開いてください。そこに必要な項目が入るなら、新しい契約は要りません。
予約側で見る項目は予約システムの選び方にまとめています。
顧客カルテ
ネット予約
予約のたびに名前と来店日が自動で残るため、記録の入り口を増やさずに履歴がたまります。
別々に持つと、名寄せができず二重になる
予約システムと顧客管理ツールを別々に持つと、同じ方が両方に登録されます。片方では常連、もう片方では初回、という食い違いが起きます。
これを後からそろえる作業を名寄せと呼びます。1件ずつ見て判断するため、件数が増えてからでは手が付けられません。
分けて持つなら、どちらを正とするかを最初に決めます。業種ごとの組み方はサロン・美容室のツール構成や治療院・整体のカテゴリーで扱っています。
連携できる、の中身を確認する
連携できると書かれていても、つながる範囲はサービスごとに違います。名前と連絡先だけが同期され、来店の履歴は移らないこともあります。契約前にご確認ください。
表計算ソフトで足りる場合、足りなくなる場合
表計算ソフトで名簿を管理している方も多くいます。これは間違ったやり方ではありません。条件がそろえば、そのままで足ります。
人数が少なく、入力するのが1人なら足りる
お客さまの数が限られていて、入力するのが自分ひとりなら、表計算で十分に回ります。項目を自由に決められ、追加の月額もかかりません。
持ち出しの心配もありません。ファイルが手元にあるため、後で専用のツールへ移すときも困りません。
向かなくなるのは、同時に触る人が増えたとき
表計算が苦しくなるのは、次のような条件が重なったときです。
- 複数のスタッフが、同じ時間に開いて書き込む
- 店の端末と外出先の両方から、同じ内容を見たい
- 見せたくない情報が混ざっていて、見る範囲を分けたい
- 行が増え、目当ての方を探すのに時間がかかる
- 誰がいつ書き換えたのか、分からなくなってきた
2つ以上あてはまるなら、専用のツールを検討する時期です。1つも当てはまらないなら、今の形を続けて構いません。
選ぶときに見る項目
専用のツールを入れると決めたら、見る項目は3つです。権限、検索、書き出しです。
スタッフごとの閲覧権限を分けられるか
全員が全部を見られる設定は、必要以上に広い状態です。担当した方の記録は見られるが、売上の全体は見られない。この分け方ができるかを確認します。
見るのは3点です。アカウントを人数分つくれるか、役割ごとに範囲を決められるか、誰がいつ見たかが残るか。
検索と絞り込みの使い勝手(来店日・メニュー別)
顧客管理ツールの価値は、探せることにあります。名前で1人を呼び出すだけなら、紙の台帳でもできます。
見るのは、条件を組み合わせて絞り込めるかです。しばらく来ていない方、特定のメニューを選ばれた方、担当した人ごと。実際に使う条件で試してください。
書き出し(CSV)と、他ツールへの移行のしやすさ
最後は出口です。確認するのは、CSVなどの形式でファイルとして書き出せるかどうかです。画面に一覧を表示できることと、取り出せることは別の話です。
解約したあとにデータがいつまで残るか、書き出す機会があるかも見ておきます。移行の手順は初期設定・データ移行のカテゴリーにまとめています。
ここだけは見る
お試し期間のうちに、一度データを書き出してみてください。書き出せると案内されていても、履歴やメモが含まれないことがあります。
紙から移すときの進め方
紙のカルテや名簿がある店では、移し方で成否が決まります。全部を一度に片づけようとすると、たいてい途中で止まります。
全件は移さない。直近に来た人から移す
まず、全件を移す計画を捨てます。何年も前に一度だけ来られた方の記録は、これから使う場面がありません。
移すのは、直近に来られた方からです。どこで線を引くかは、店の来店周期に合わせます。毎月来られる業種と、年に一度の業種では区切りが変わります。
残りの紙は捨てず、そのまま保管します。必要になったときだけ探し、そのタイミングでデータに起こす。この形がいちばん手を止めません。
入力を誰がいつやるか決めてから始める
移行が止まるもう一つの理由は、担当が決まっていないことです。「手が空いたときに」と決めると、手は空きません。分担の型は3つあります。
- 来店時に、その場でスタッフが登録する(来られた方から自然に埋まる)
- 閉店後の決まった時間に、担当者が数件ずつ入れる
- 紙を見ながら打ち込む作業だけを、外に依頼する
現実的なのは1つめです。来店時の登録を通常の手順に組み込むと、来店周期がひと回りする頃には、よく来られる方の記録がそろいます。伝え方はスタッフへの定着のカテゴリーで扱っています。
途中でやめたときに、何が残るか
移行の途中でやめる可能性も考えておきます。よく来られる方から入れているため、半分だけ入った状態は、あまり困りません。
困るのは、紙を処分したあとで止まった場合です。データにも紙にも記録が無い方が出てしまいます。移し終えるまで、元の紙は必ず残してください。
もう一つ決めるのが、二重管理をやめる日です。紙とツールの両方に書き続けると、手間が増えたまま元のやり方へ戻ります。移し終えた方は紙に書かない、と日付で区切ります。
紙を処分する前に
処分するのは、データに入った内容を目で確かめてからです。まとめて取り込むと、文字が欠けたり日付の形式がずれたりすることがあります。
個人情報を持つ責任が増えることを理解する
情報を一か所に集めると、探す手間は減ります。同時に、預かっているものの重みも増えます。難しい対策の前に、決めておきたいことがあります。
保存する場所と、見られる人を限定する
個人情報保護法の考え方では、取得した情報を伝えた目的の範囲で使い、安全に管理することが求められます。小さな事業でできる第一歩は、見られる人を絞ることです。
共用のアカウントをやめ、1人ずつ用意します。誰がいつ見たかが残る形にしておけば、何かあったときに確認ができます。
見落としやすいのが、辞めた方のアカウントです。退職の日にログインを止める手順まで決めておきます。前任者のアカウントを別の方に使い回すのも避けます。守り方の基本はセキュリティ・バックアップのカテゴリーにまとめています。
写真や手書きメモを、どこに残すか決める
添付した写真やメモは、扱いが曖昧になりがちです。撮影した端末の中に、元のデータが残ったままになることもあります。
決めておくのは、撮る端末、保存する場所、消す時期の3つです。私物の端末で撮るなら、業務用の保存先へ移したあとに端末から消します。移行のために作ったCSVも同じ扱いにします。
取得の目的を伝える・同意の取り方は自社で決める
どんな目的で情報をいただくかは、お客さまに伝えておきます。連絡と記録のためか、案内を送るためかで、伝える内容が変わります。
記入していただく用紙や予約の画面に、目的を短く書いておく形が一般的です。案内を送るかどうかは、選べるようにしておきます。
判断が要る部分は専門家へ
この記事で扱うのは一般的な考え方までです。同意の文面や、自社の運用が要件を満たしているかの判断は、専門家にご確認ください。
顧客管理は、そろえること自体が目的ではありません。次に来られたときに前回の続きから話せるかで判断してください。用語の意味は用語集をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
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表計算ソフトのままでも大丈夫ですか?
お客さまの数が限られ、入力するのが自分ひとりなら足ります。複数人が同時に書き込む、外出先からも見たい、見る範囲を分けたい。こうした場面が出てきたら検討してください。
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紙のカルテは、全部データにすべきですか?
その必要はありません。直近に来られた方から移し、残りは紙のまま保管する形で足ります。紙は移し終えるまで処分しないでください。
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予約システムに顧客の機能があれば、別のツールは要りませんか?
記録したい項目がそこに入るなら要りません。まず手元の予約システムやレジで何が記録されているかを確認してください。
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記録する項目は、多いほうがよいのでしょうか。
増やすほど入力の時間が伸び、続かなくなります。次の行動につながる項目だけに絞ってください。後から足せます。
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スタッフに顧客情報を見せてよいのでしょうか。
業務に必要な範囲で見られるようにするのが基本です。共用のアカウントは避け、1人ずつ用意します。退職時にログインを止める手順も決めておいてください。
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途中で別のツールに替えられますか?
CSVなどの形式で書き出せるサービスなら移せます。書き出しの可否と、解約後にデータがいつまで残るかを、契約前に確認してください。

