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予約の電話、手書きの台帳、月末の請求書。どれも手間だとわかっていても、どこから手を付けるかは決めにくいものです。
比較サイトを開けば、機能の一覧と料金表が並んでいます。ただ、判断の軸が自分の中にないまま表を眺めても、決め手は見つかりません。
この記事では、比較を始める前に決めておく5つのことを整理します。ここが決まっていれば、候補は自然に絞れます。
ツールを増やす前に、困りごとを3つに絞る
道具を選ぶ前に、何に困っているかを言葉にします。困りごとが曖昧なままだと、機能の多さで選んでしまいます。
「時間が足りない」を作業の名前まで分解する
「時間が足りない」は、困りごとの名前としては大きすぎます。実際にやっている作業の名前まで下ろしてください。
「予約の電話に出て、台帳に書き写す」「月末に売上をノートから集計する」という粒度です。ここまで下りると、その作業を減らせる道具は数種類に限られます。
人の問題か、仕組みの問題かを分けて考える
忙しさの原因が人手そのものにある場合、ツールでは解決しません。施術や調理や接客の時間は、道具では短くならないからです。
ツールが効くのは、判断がほとんど要らない、次のような作業です。
- 同じ内容を、紙とパソコンなど二か所に書いている(転記)
- 予約の空きや過去の履歴を、毎回探している(検索)
- 決まった連絡を、毎回手で送っている(案内・確認)
- 月末や期末に、まとめて集計している(後回しの積み上げ)
ツールは人の代わりではなく、手順を減らす道具です。ここを取り違えると、入れても期待した効果が出ません。
絞れないときは、1週間の作業を時間つきで書き出す
困りごとが3つに絞れないときは、手元のメモで構いません。何時に何をしたかを、1週間だけ書き出します。
1週間分たまると、思っていた作業と、実際に時間を使っている作業のずれが見えます。感覚ではなく記録で選べます。
ここだけは見る
困りごとは「時間が足りない」ではなく「予約の電話を台帳に書き写している」と、作業の名前で書きます。名前が付いたものだけが、道具で減らせる対象です。
決めること①:毎日さわる人を先に決める
最初に決めるのは、機能でも料金でもなく「誰が毎日さわるか」です。ここで見るべき条件が変わります。
決める人と使う人が違うと、たいてい続かない
経営者が調べて契約し、実際に入力するのはスタッフ、という形はよくあります。この場合、選ぶ基準は使う人の側に置きます。
見るのは、画面の文字が読みやすいか、覚えることが少ないか、間違えたときに戻せるかの3点です。無料で試せる期間に、使う人へ触ってもらえば分かります。
スタッフが使うなら、スマホだけで完結するかを見る
店頭では、パソコンを開いて座る時間がありません。予約の確認、会計、記録の追記が、スマホだけで終わるかを確認します。
管理画面がパソコン専用のツールもあります。その場合、事務作業が特定の人に集まり、その人が休んだ日に業務が止まります。
決めること②:月にいくらまで払えるかの上限を決める
次に決めるのは、毎月払える上限です。候補を見てから予算を考えると、上位のプランに引っぱられます。費用の並べ方は料金の比べ方の記事で詳しく説明しています。
月額だけでなく、初期費用と決済手数料を足して考える
料金表の月額は、支払いの一部でしかありません。実際には、次のような費用が上に乗ります。
- 導入時の初期費用や、初期設定の代行費用
- 機能を追加したときのオプション料金
- 店舗やスタッフを増やしたときの追加分
- キャッシュレスを使う場合の決済手数料
- 通知メールやSMSの送信料など、使った量で増える費用
- 専用端末やレシート用紙などの機械代・消耗品代
金額はサービスごとに違うので、公式サイトの料金ページで確認してください。大事なのは、月額のほかに何が乗るのかという構造です。用語の意味は用語集にまとめています。
上限は「今の売上」ではなく「今の粗利」から決める
上限を売上から決めると、手元に残るお金より大きな金額を見込んでしまいます。基準にするのは、売上から材料費や仕入れなど、売るために直接かかる費用を引いた残りです。
そこから家賃や人件費など毎月必ず出ていく費用を引き、残った範囲で上限を決めます。費用の区分や経費としての扱いは事業の形で変わるため、迷うところは税理士に確認してください。
上限を決めてから比べると、候補が一気に減る
上限を先に決めると、比較の問いが変わります。「どれが多機能か」ではなく「この金額の中で、決めた作業が回るか」になります。
この時点で候補はかなり減り、残ったものだけを調べれば済みます。
契約前に確認
無料で使える範囲は、登録できる件数や使える機能で区切られていることがあります。範囲を超えたときにどのプランへ移るのか、その条件を契約前に確認してください。
決めること③:やめる作業と、やめない作業を分ける
3つめは、導入と引き換えにやめる作業を決めることです。ここを決めないまま入れると、作業は減らずに増えます。
ツールを入れても、やめる作業がなければ手間は増える
新しいツールは、入力する場所をひとつ増やします。今までの作業をそのまま続ければ、仕事がひとつ増えただけです。
そこで「これを入れたら、この作業はやめる」という組を先に決めます。ネット予約を入れるなら、電話の予約を台帳へ書き写す作業をやめる、という形です。
やめない作業も決めておきます。常連の好みを紙のカードに残すなど、続けたほうが早いものは無理に移す必要がありません。
紙とアプリの二重管理は、いちばん多い失敗
導入がうまくいかない例で最も多いのが、紙とアプリを両方使い続ける状態です。どちらが正しいのか分からなくなり、確認作業が増えます。
移行の期間だけ両方を残すのは構いません。ただし「いつまで両方使うか」を先に決めてください。期限がないと、紙のほうが早いという理由で元に戻ります。
決めること④:データをどこに残すかを決める
4つめは、日々たまっていく情報の置き場所です。ここを決めずに増やすと、同じ内容が複数の場所に散らばります。
顧客名簿・売上・予約履歴が、どのツールに溜まるかを図にする
紙で構いません。四角を並べて、どの情報がどこに残るかを線で結びます。図にすると、抜けているところがすぐ分かります。
- 顧客の名前と連絡先は、どこが正本になるのか
- 予約の履歴は、どのツールに残るのか
- 売上の記録は、会計側とレジ側のどちらを正とするのか
- 写真やメモなど、形式が決まっていない記録はどこに置くのか
とくに顧客の連絡先は、複数の場所に散ると更新が追いつきません。どれが最新かを迷わないよう、正本をひとつに決めます。
「後で連携する」は、たいてい後で困る
「まずはこれだけ入れて、連携は後で考える」という進め方はよくあります。ただ、この判断が毎月の手作業を生むことがあります。
確認するのは3点です。ツール同士が最初からつながるのか、ファイルで書き出して取り込めるのか、手で入力し直すのか。3つめだけは、作業として残り続けます。
予約システム
会計ソフト
予約から売上の記録までを1本の流れにすると、月末にノートを見ながら数え直す作業がなくなります。つながらない場合は、書き出したファイルを取り込めるかを先に確認します。
決めること⑤:やめるときの出口を先に確認する
最後は出口です。始め方より、やめ方のほうが調べにくく、あとで効いてきます。
最低利用期間と解約の申し出時期を、契約前に見る
契約には、一定期間は使い続ける約束が付いていることがあります。合わないと分かっても、その期間は支払いが続きます。
解約の申し出をいつまでに出すかも、あわせて確認します。締切を過ぎると翌月分まで支払う契約もあります。契約まわりの確認項目は契約・解約・移行のカテゴリーで扱っています。
データを書き出せる形式(CSVなど)があるかを確認する
ためた顧客名簿や売上の記録を、手元に取り出せるかを見ます。画面では見えても、ファイルとして書き出せない場合があります。
書き出せるなら、どの情報が含まれるかも確認します。名前と連絡先は出せても、施術の履歴やメモは出せない、という区切りはよくあります。
解約後にデータが消えるまでの期間も見ておきます。書き出す作業を、その日までに終える必要があります。
出口が見えないツールは、便利でも候補から外す
出口が確認できないものは、使うほど動けなくなります。データが増えるほど、乗り換えの手間が大きくなるからです。
公式サイトに記載がなければ、問い合わせて聞けば済みます。この質問に答えが返るかどうかも、判断の材料です。
決めたことを1枚にまとめてから、比較を始める
5つが決まったら、紙1枚にまとめます。この1枚が、比較のときの物差しになります。
5つの答えを書いた「選定メモ」の作り方
書くのは次の5行だけです。読み返したときに、条件を思い出せれば十分です。
- 減らしたい作業(作業の名前で3つまで)
- 毎日さわる人と、その人が使う機械(スマホかパソコンか)
- 毎月払える上限と、そこに含める費用の範囲
- 導入と引き換えにやめる作業、および続ける作業
- 顧客名簿と売上の正本を置く場所、出口の確認結果
候補を見つけたら、このメモと突き合わせます。1行でも合わないものは、そこで外して構いません。問い合わせのときも、この5行を伝えると話が早く進みます。
迷ったら、業種別の記事と診断ページで方向を絞る
予約の受け方から見直すなら予約システムの選び方、請求や記帳から整えるなら会計ソフトの選び方が入口になります。組み合わせ方の例はサロンのツール構成で見られます。
どの分野から手を付けるか決まらない場合は、仕事ツール診断で方向を絞れます。質問に答えると、優先度の高い分野が出ます。
よくある質問(FAQ)
-
ツールは一度にいくつまで導入してよいですか。
まずは1つに絞ることをおすすめします。同時に複数を変えると、うまくいかないときに原因が分かりません。ひとつが日常に馴染んでから次を検討してください。
-
無料のツールから始めるのは良い方法ですか。
使い勝手を確かめる分には向いています。ただし無料の範囲は件数や機能で区切られていることが多いため、超えたときの条件と、データを書き出せるかを先に確認してください。
-
スタッフが新しいものを嫌がります。
決めたあとで説得するより、決める前に触ってもらうほうが進みます。候補を絞る段階で操作してもらい、覚えることが少ないほうを選ぶと定着しやすくなります。
-
5つを決めるのに、どのくらい時間をかけるべきですか。
1週間の作業を書き出す期間を含めても、決める作業そのものは長くかかりません。完璧な答えより、書き出して見比べられる状態にすることが目的です。
-
選んだあとで合わないと分かったら、どうすればよいですか。
出口を先に確認していれば、乗り換えの負担は小さく済みます。データを書き出し、やめる作業とやめない作業をもう一度整理してから、次の候補に移ってください。
ツール選びで迷う原因の多くは、選択肢の多さではなく、判断の軸が決まっていないことにあります。使う人、払える上限、やめる作業、データの置き場所、出口。この5つが決まれば、比較表は答え合わせの道具になります。
なお、道具を入れれば売上が増えるわけではありません。減らせるのは手間であり、集客の代わりにはならない点は押さえておいてください。料金を総額で書き、向かない事業についても書いている理由は編集ポリシーにまとめています。

