帳簿・領収書の保存とデータ化|電子帳簿保存法とのつきあい方

帳簿・領収書の保存とデータ化|電子帳簿保存法とのつきあい方

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レジのレシート、取引先からのPDF請求書、通帳のコピー。小さな事業ほど、帳簿と証憑(しょうひょう)の形式は紙とデータが入り混じっています。「とりあえず保存しておく」で乗り切っていると、確定申告や税務調査のときに必要なものが出てこない、という事態になりかねません。この記事では、帳簿・領収書の保存の考え方と、電子帳簿保存法という制度とのつきあい方、今日から整えられる保存の仕組みを整理します。

目次

なぜ「保存」が経営に関わるのか

帳簿や領収書の保存は、税務申告のためだけの作業ではありません。取引の記録が整理されていることは、資金繰りの把握や、融資の相談、事業を引き継ぐときの説明にもつながります。逆に保存が崩れていると、確定申告の直前に慌てて集める羽目になり、必要な書類が見つからないまま申告することにもなりかねません。

保存を怠ると起きること

領収書や請求書が散逸すると、経費として計上できるはずのものが証明できなくなります。税務調査が入ったときに提示を求められて出せない、という状況は避けたいところです。保存は「後で自分を守るための記録」でもあります。

紙とデータが混在する事業の実情

現金払いのレシートは紙、ネット経由の請求書はPDF、通帳は紙とネットバンキングの画面と、事業が小さくても保存の形式は一本化されていないのが普通です。まずは「今、何がどこにどんな形で残っているか」を棚卸しすることから始めます。

棚卸しの進め方

1か月分の取引を思い浮かべ、紙で残るもの・データで届くもの・自分で発行するものに分けてみましょう。分けた時点で「紙をスキャンして残す」「データはそのまま残す」という方針の輪郭が見えてきます。

何を、どのくらいの期間保存するのか

保存すべき対象と期間は、帳簿の種類、個人事業か法人か、青色申告か白色申告かによって国税庁が定めています。具体的な年数は制度改正で変わることがあるため、この記事では踏み込みません。事業形態ごとに条件が異なることを踏まえたうえで、必ず国税庁の公式情報か税理士で確認してください。

帳簿と書類で扱いが違う

仕訳帳や総勘定元帳といった「帳簿」と、領収書や請求書といった「書類」は、制度上別のものとして扱われます。どちらも保存の対象ですが、保存期間や保存方法の細かい要件が異なる場合があるため、まとめて同じルールで扱わないよう注意します。

個人事業と法人で変わる点

個人事業主か法人かによって、保存すべき書類の範囲や期間が変わることがあります。青色申告の準備については 青色申告の準備を年内に整える でも触れているので、あわせて確認してください。

保存期間を過ぎたものの扱い

保存期間が過ぎたからといって即座に消してよいとは限りません。融資の審査や助成金の申請で過去の書類を求められることもあるため、消去の判断も含めて専門家に相談してから決めるのが安全です。

契約前に確認

保存期間・対象書類の具体的な年数や範囲は、事業形態や制度改正によって変わります。この記事では制度の一般的な考え方までにとどめ、自社への当てはめは税理士または所轄の税務署に確認してください。

電子帳簿保存法という制度の考え方

電子帳簿保存法は、帳簿や書類を紙ではなくデータで保存するときの条件を定めた法律です。「紙をやめてデータにしなさい」という強制の制度ではなく、「データで残すならこの条件を満たしてください」という残し方の条件を定めたもの、と捉えると理解しやすくなります。

対象は大きく3つに分かれる

会計ソフトで作った帳簿をデータのまま保存する場合、紙の書類をスキャンしてデータで残す場合、メールやネット経由で最初からデータで受け取った請求書などを保存する場合、で条件が分かれています。自分の事業がどのケースに当てはまるかを整理すると、必要な対応が見えてきます。

「検索できる状態」という条件

データで保存する場合、日付・取引先・金額などで検索できる状態にしておくことが条件のひとつになっています。ファイルを日付順のフォルダに放り込むだけでは足りず、ファイル名の付け方や検索の仕組みを用意しておく必要があります。

タイムスタンプという言葉の意味

スキャンした書類が後から改ざんされていないことを示すための仕組みとして、タイムスタンプという用語が出てきます。多くの会計ソフトやスキャナ保存対応サービスは、この機能をあらかじめ組み込んでいます。仕組み自体を自作する必要はなく、対応したサービスを使えば運用でカバーできる部分です。

紙の領収書をデータで残す方法

紙で受け取った領収書やレシートをデータ化する方法は、大きく分けてスキャナでの取り込みとスマートフォンでの撮影の2通りです。どちらも会計ソフトや専用アプリと連携させることで、検索できる状態を保ちながら保存できます。

スキャナ保存を使う場合

複合機やスキャナで書類を読み取り、専用ソフトに取り込む方法です。まとまった量の書類を処理する事業に向いています。導入時は、使っている会計ソフトや請求書サービスがスキャナ保存の要件に対応しているかを確認します。

スマホ撮影で残す運用

外出先で受け取った領収書をその場でスマホ撮影し、アプリに取り込む運用は、小さな事業ほど現実的です。受け取ったその日のうちに撮影する、というルールを決めておくと、あとで紙が行方不明になる事故を防げます。

撮影・スキャン後の紙の扱い

データ化した後の紙原本を捨ててよいかどうかは、対応方法や書類の種類によって条件が変わります。判断に迷う場合は紙も一定期間残しておき、専門家に確認してから処分するのが無難です。

会計ソフト・請求書ツールでの実務

保存の要件を一から自分で満たそうとすると負担が大きくなります。多くの会計ソフトや請求書発行サービスは、電子帳簿保存法への対応を機能として組み込んでいるため、対応済みのサービスを選ぶことが実務上の近道になります。会計ソフトの選び方全般は 会計ソフトの選び方|請求書・インボイス対応で見る5項目 で扱っています。

会計ソフトに直接連携するデータ

ネットバンキングやキャッシュレス決済の明細を会計ソフトに自動で取り込む場合、そのデータ自体が電子的に作成された帳簿の一部になります。取り込んだ後に手作業で書き換えると条件から外れることがあるため、修正が必要な場合の手順もあわせて確認しておきます。

請求書・領収書を電子で発行する場合

自分が発行する請求書や領収書を最初からデータで発行する場合も、保存の対象になります。発行から入金までの流れは 請求から入金までを短くする でも扱っているので、発行の仕組みとあわせて見直すとよいでしょう。

経費精算との関係

スタッフが立て替えた経費の領収書をデータで受け取る運用にする場合は、経費精算の仕組みそのものを見直すきっかけにもなります。詳しくは 経費精算のデジタル化|紙の申請から卒業する三つの視点 を参照してください。

ここだけは見る

保存する書類の種類ごとに、①紙のまま残すか ②データ化するか ③最初からデータで受け取るか、を分けて整理する。すべて同じ方法で対応しようとすると無理が出ます。

保存の運用ルールを先に決める

道具を選ぶ前に、誰が・いつ・どこに保存するかという運用ルールを決めておくと、後から迷いません。ルールが曖昧なまま複数のサービスを使い始めると、書類がサービスをまたいで分散し、かえって探しにくくなります。

誰が・いつ保存するかを決める

領収書を受け取った本人がその場で処理するのか、月末にまとめて経理担当が処理するのか、役割とタイミングを決めておきます。担当者が変わっても同じ手順で回せるよう、簡単な手順書にしておくと安心です。

保存先を一本化する

会計ソフト、クラウドストレージ、メールの添付ファイルと保存先がばらばらだと、検索できる状態を保てません。原則としてどこに集約するかを決め、他の場所に届いたものは移す運用にします。データの保存先を整理する考え方は 顧客データの守り方|バックアップ・権限・パスワードの基本 とも共通する部分があります。

ツールを乗り換えるときの注意

会計ソフトや保存サービスを乗り換える際は、過去の保存データを新しいサービスに移せるか、移せない場合は旧サービス側にどう残すかを事前に確認します。進め方は ツール乗り換えのデータ移行|順番と、事前に決めること で、解約時の注意は 解約とデータの持ち出し|契約前に確認する6つのポイント でそれぞれ扱っています。

判断に迷ったときの相談先

保存の制度は事業の形態や取引の内容によって当てはめ方が変わります。自己判断で進めて後から間違いに気づくより、早い段階で確認しておくほうが手戻りが少なくて済みます。

制度の解釈は専門家に確認する

顧問税理士がいる場合は、保存方法を変える前に相談するのが確実です。まだ税理士がいない場合は、商工会議所や税務署の相談窓口でも一般的な案内を受けられます。

公式情報を定期的に確認する

制度は改正されることがあるため、会計ソフトのお知らせや国税庁の公式サイトを定期的に確認する習慣をつけておくと、変更に気づかず対応が遅れる事態を避けられます。

スモールスタートで整える

すべてを一度に完璧な形にしようとせず、まずは今後受け取る書類から新しい保存方法に切り替え、過去の書類は現状のまま整理して残す、というスモールスタートでも構いません。運用を回しながら少しずつ整えていく姿勢のほうが、長く続けられます。

よくある質問(FAQ)

  • 紙の領収書は全部データ化しないといけませんか。

    義務ではありません。紙のまま保存を続けることもできます。データ化するかどうかは、保存の手間や検索のしやすさを踏まえて事業ごとに選ぶものです。

  • 会計ソフトを使っていれば自動的に制度に対応できますか。

    対応した機能を持つソフトを使い、要件どおりに運用して初めて対応したことになります。導入しただけで自動的に満たされるわけではないため、設定や使い方を確認してください。

  • 保存期間はどこで確認すればいいですか。

    国税庁の公式サイトや、契約している税理士に確認するのが確実です。事業形態や書類の種類によって扱いが変わるため、この記事だけで判断しないようにしてください。

  • 個人事業主でも電子帳簿保存法は関係ありますか。

    関係します。法人だけの制度ではなく、帳簿や書類をデータで保存するすべての事業者が対象になり得ます。

  • 今すぐ何から始めればいいですか。

    まず今の保存状況を紙とデータに分けて棚卸しし、今後受け取る書類の保存ルールから決めることです。過去の書類は現状のまま整理し、専門家に確認しながら少しずつ整えていきましょう。

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