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飲食店を続けていると、売上は増えているのに手元にお金が残らない、という時期が来ることがあります。原因を探そうにも、どのメニューがどれだけ利益を生んでいるのかが分からない。仕入れの請求書は束になっているのに、メニューとは結びついていない。そんな状態からの立て直しを考える記事です。
ここでは、原価の計算方法を細かく解説するよりも、レジに溜まっているデータと仕入れの記録をどうそろえれば「見える」ようになるかを整理します。店全体のツール構成は飲食店のツール構成で扱っているので、この記事では原価とメニューの見方に絞ります。
原価が見えない店に共通していること
原価が分からないと感じている店を見ていくと、計算ができないのではなく、計算の材料がそろっていないことがほとんどです。まずは、どこで材料が欠けているのかを確認します。
仕入れの記録が、支払いの記録しかない
業者への支払いは通帳や請求書で追えても、何をどれだけ仕入れたかは残っていない、という店は少なくありません。支払いの記録は月の合計を知るには足りますが、どの食材が値上がりしたのか、どの品目が増えたのかまでは分かりません。原価を見るには、品目と数量の単位で記録が残っている必要があります。
レジの売上が「フード」「ドリンク」の大くくりになっている
開店のときに急いでレジを設定すると、メニューを部門ボタンでまとめて打つ形になりがちです。この形だと、会計は速くても、どの品が何回出たかがあとから分かりません。メニューごとの売れ方を読むには、少なくとも主力の品は個別に登録されている必要があります。
原価の話が、決算のときにしか出てこない
年に一度、税理士や会計ソフトの集計で原価の合計を見て、初めて驚くという流れも多く見られます。そのときには、どの月のどの品が原因だったのかを追うのが難しくなっています。月ごとに一度でも店全体の原価を見る習慣があれば、ずれに早く気づけます。
原価は「店全体」と「メニューごと」の二段で見る
原価管理というと、すべてのメニューにレシピを作り、一品ずつ原価を計算する姿を想像するかもしれません。ただ、小さな店でいきなりそこまで進めると、手間の重さで止まってしまいます。見る単位を二段に分けると、無理なく始められます。
店全体の原価は、仕入れと棚卸しで出せる
店全体の原価は、月初めにあった在庫に、その月の仕入れを足し、月末に残った在庫を引くと求められます。必要なのは、仕入れの合計と、月初めと月末の棚卸しの二つです。レシピが一つも無くても、この計算はできます。棚卸しの進め方は棚卸しのやり方にまとめていますので、あわせてご覧ください。
メニューごとの原価は、よく出る品から順に作る
メニューごとの原価は、一品に使う食材の量と、その食材の仕入れ値から出します。全メニューを一度に作る必要はありません。売れ数の多い品は、原価の少しの差が月の合計に大きく響きます。まずは売れ数の上位から手をつけ、残りは季節の見直しに合わせて足していく形で十分です。
レシピの書き方を、店の中でそろえておく
レシピを作るときは、食材の量を「ひとつかみ」「少々」ではなく、重さや個数で書くようにします。仕入れの単位と使う単位が違う食材は、仕入れた一袋から何人前が取れるかを一度測っておくと、計算が楽になります。下処理で捨てる部分が多い食材は、捨てる前の重さで仕入れ値を割り当てておくと、原価が低く見えすぎることを防げます。
書式は表計算ソフトでもレシピ管理の機能を持つツールでもかまいません。大事なのは、誰が見ても同じ量で作れることです。スタッフによって盛り付けの量がばらつくと、レシピ上の原価と実際の原価がずれていきます。レシピは原価の計算のためだけでなく、提供の品質をそろえる道具にもなります。
二段の使い分け
店全体の原価は「ずれているかどうか」を月ごとに知るためのもの。メニューごとの原価は「どの品を見直すか」を決めるためのもの。前者でずれに気づき、後者で原因を探す順番にすると、作業が迷いません。
仕入れの記録をそろえる
店全体の原価を毎月出すには、仕入れの記録が月末に一か所へ集まっている必要があります。業者ごとに届き方がばらばらでも、集める場所と締めのタイミングを決めれば回るようになります。
納品書と請求書を、届いた日に一か所へ
紙の納品書、メールで届く請求書、ネット注文の明細など、仕入れの記録は形がそろいません。届いた日に写真を撮る、決まったフォルダへ保存するなど、置き場所を一つにするだけで月末の集計が軽くなります。会計ソフトの中には、読み取った明細を仕訳の候補にする機能を持つものもあります。
市場や小売店での現金仕入れを落とさない
取引先からの仕入れは記録が残りやすい一方、急な買い足しで近所の店に走ったときのレシートは抜けやすいものです。現金で買ったものほど記録から漏れ、原価が実際より低く見えてしまいます。レシートを入れる箱を決める、スタッフの立替は精算のルールを先に決めておく、といった仕組みで漏れを防ぎます。
食材の単価が変わったら、そこだけ控えておく
メニューごとの原価は、食材の仕入れ値が変わるとずれていきます。すべての単価を毎回更新するのは大変なので、よく使う食材の値段が変わったときだけ控えておくと、見直しのときに役立ちます。値段の変化が続いた食材は、メニュー価格を考え直す材料にもなります。価格を変えるときの段取りは価格改定の進め方で扱っています。
レジのデータで、メニューの売れ方を読む
メニューごとの売れ数は、レジ(POS)に毎日溜まっています。ただ、登録のしかたによっては、あとから読める数字が粗くなります。データを使う前に、登録の粒度を点検しておきます。
メニュー登録の粒度が、読める数字を決める
同じ料理でもサイズ違いや追加トッピングがある場合、それぞれを別に登録するか、オプションとして付けるかで集計の見え方が変わります。原価が大きく違うものは別の品として分け、原価がほとんど変わらないものはまとめる、という基準で整理すると読みやすくなります。期間限定の品は、終わったときに非表示にできるかも確認しておきます。
時間帯と曜日で分けて見る
一日の合計だけで見ると、昼に強い品と夜に強い品の違いが埋もれます。多くのレジは、時間帯別や曜日別に売れ数を出せます。仕込みの量を決めるときにも、この切り分けが役立ちます。店内とテイクアウトを分けて集計できるかも、レジを選ぶときに確かめておきたい点です。
取り消しとサービス品を、別に数える
打ち間違いの取り消しや、常連へのサービス品、まかないの扱いがそろっていないと、売れ数と食材の減り方が合わなくなります。サービス品は金額をゼロにして打つ、まかないは別のボタンで記録するなど、店のルールを決めておくと原価のずれを説明しやすくなります。
契約前に確認
レジの集計画面で見られる期間や、データを書き出せる形式は、機種や契約内容によって違います。過去の売上をどこまでさかのぼれるか、表計算ソフトで開ける形で書き出せるかは、導入前に確認しておきましょう。乗り換えの流れはレジの入れ替えで整理しています。
売れ数と原価を並べて、見直す品を決める
メニューごとの原価と売れ数がそろったら、並べて見ることで、手を入れる順番が決められます。どの品も同じように見直すのではなく、影響の大きいところから始めます。
四つの箱に分けてみる
売れ数の多い少ない、一品あたりの利益の大きい小さいで、メニューを四つに分けてみます。よく売れて利益も大きい品は、店の柱として品質と提供を守ります。よく売れるが利益が小さい品は、分量や食材の見直し、価格の検討の対象です。利益は大きいのに売れない品は、見せ方やすすめ方を変える余地があります。どちらも小さい品は、入れ替えの候補になります。
原価率だけで切らない
原価の割合が高い品でも、それを目当てに来るお客さまがいて、ほかの注文につながっていることがあります。一品の数字だけで外すと、客数そのものが減ることもあります。数字は判断の材料であり、答えではありません。常連の注文の組み合わせや、スタッフが感じている手応えも一緒に見て決めます。
仕込みの手間も、見えない原価として数える
食材の原価が低くても、仕込みに長い時間がかかる品は、人の時間を多く使っています。忙しい時間帯に手が止まる品は、提供の遅れにもつながります。人件費の見方は飲食店のシフトと人件費の管理で扱っていますが、メニューを見直すときも手間を一緒に考えておくと判断がぶれにくくなります。
会計ソフトへの渡し方と、続ける仕組み
原価の管理は、一度やって終わりではありません。毎月の締めの流れに組み込み、会計の記録とつながっていると、手間を増やさずに続けられます。
売上と仕入れを、同じ月の区切りで締める
レジの売上と仕入れの記録の締め日がずれていると、店全体の原価が月ごとにぶれて見えます。レジの日次の締めと、仕入れ先の請求の締めを確認し、原価を見るための月の区切りをそろえておきます。レジと会計ソフトが連携していれば、売上の取り込みは自動にできる場合があります。会計ソフトの選び方は会計ソフトの選び方を参考にしてください。
見る数字を絞り、同じ日に見る
毎月見るのは、店全体の原価の割合、売れ数上位の品の顔ぶれ、単価の変わった食材、の三つ程度で十分です。見る日を月初めの決まった日にしておくと、忙しさに流されずに続きます。数字の変化に気づいたら、そのときだけメニューごとの原価まで掘り下げます。
税務上の扱いは、専門家に確認する
店の中で見る原価と、決算や申告で使う売上原価は、目的が違います。まかないや自家消費、棚卸しの評価のしかたなど、税務上の扱いに迷う点は、顧問の税理士や所轄の税務署に確認してください。この記事で扱っているのは、店の運営に使うための数字の見方です。
レジ(POS)
会計ソフト
売れ数はレジ、仕入れは会計ソフトに集めると、原価を見るための材料が二か所でそろいます。連携できる組み合わせなら、売上の入力し直しも減らせます。
ほかの飲食店向けの記事は飲食店のカテゴリーにまとめています。
よくある質問(FAQ)
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レシピを作る時間がありません。原価管理はできませんか。
店全体の原価なら、仕入れの合計と月初め・月末の棚卸しがあれば出せます。レシピは売れ数の多い品から、少しずつ足していけば十分です。
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レジが部門ボタンだけの設定になっています。どうすればよいですか。
まずは売れ数の多い主力の品だけを個別の商品として登録し直すところから始めます。すべてを一度に分ける必要はありません。
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まかないやサービス品はどう扱えばよいですか。
店の中で原価を見る目的なら、別のボタンで記録するなど扱いをそろえることが大切です。税務上の扱いは税理士や所轄の税務署に確認してください。
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原価の割合が高いメニューは外したほうがよいですか。
数字だけで決めず、その品が来店のきっかけになっていないか、ほかの注文とどう組み合わさっているかも見て判断します。
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原価はどのくらいの頻度で見ればよいですか。
店全体の原価は月に一度、決まった日に見るのが続けやすい形です。ずれに気づいたときに、メニューごとの原価まで掘り下げます。

