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問い合わせへの返信が、いつも後回しになる。夜にまとめて書いている。そういう声をよく聞きます。
この記事では、文章を作るAIに返信の下書きを作らせる手順をまとめます。ただし、出てきた文章をそのまま送る使い方は勧めません。人が確認する工程を残したうえで、書き出しの手間だけを減らす方法です。どの仕事を任せてよいかという線引き全体はAI導入の最初の一歩にまとめています。
返信が遅れるのは、書き出しで止まるから
返信の遅れを忙しさのせいにしても、来月も同じことが起きます。実際に時間を取っているのは、書く内容ではなく書き出しです。
内容は決まっているのに、手が止まる
問い合わせの答えは、たいてい頭の中にあります。駐車場の有無、キャンセルの扱い、対応できる時間帯。迷うところはほとんどありません。
それでも手が止まるのは、文章の形にする作業が残っているからです。書き出しの一行、相手への気遣い、締めの言葉。ここに時間がかかります。
とくに、断る返信や、こちらに落ち度がある返信ほど後回しになります。言い方を考えているうちに、次の仕事が入ってきます。
待っている間に、お客さまは別を探し始める
問い合わせをした側は、返事を待つあいだも動いています。ほかの店を見たり、先に別の予約を入れたりします。
文面を練り上げてから送るより、早く形にして返せる仕組みを持つほうが現実的です。完璧な文章より、届くのが早い返信のほうが役に立ちます。
どれくらいで返すか、自分の目安も決めておいてください。目安が無いと、忙しい日は際限なく後ろへずれます。
AIに任せるのは「最初の一行」まで
そこで、下書きだけを作らせます。返信そのものを任せるのではなく、白紙を埋めるところまでを頼む使い方です。
出てきた文章は、そのままでは送れません。事実が違っていたり、していない約束が混ざっていたりします。直して送るところまでが人の仕事です。
ここだけは見る
下書きを作らせる目的は、文章をうまくすることではありません。手が止まる時間をなくすことです。うまく書けているように見えても、事実の確認を省いてよい理由にはなりません。
下書きを作らせる前にそろえるもの
いきなり頼んでも、当たり障りのない文章しか出てきません。先に材料をそろえておくと、直す量が大きく減ります。
よくある質問と、自分の答えを書き出す
まず、実際に届いた問い合わせを並べます。メールの受信箱や、公式アカウントのトーク履歴をさかのぼると早く集まります。
- 場所、駐車場、行き方についての質問
- 予約の変更やキャンセルの扱い
- 支払いの方法、使えるカードや電子マネー
- 子ども連れ、ペット、車いすでの利用
- 初めての方が不安に思うこと(所要時間、持ち物)
並べたら、それぞれに自分の答えを一行で書きます。ここがいちばん面倒な工程ですが、あとの作業がすべて楽になります。
店の決まりごとを一枚にまとめる
答えの根拠になるのは、店の決まりごとです。営業時間、定休日、予約の締め切り、キャンセルの扱い、支払い方法をまとめます。
これを一枚にしておき、下書きを頼むときに一緒に渡します。渡さなければ、AIは一般的な言い回しで空白を埋めてしまいます。
金額や時間を含む項目は、とくに正確に書いてください。あとで人が確認するときの照合先になります。
断るときの言い方を、先に決めておく
いちばん時間がかかるのは、断る返信です。できないことを角を立てずに伝える文面は、その場で考えると必ず止まります。
- 受けられない条件(対応していない施術、扱っていない商品)
- 直前のキャンセルや変更を求められたとき
- 希望日が埋まっているときの案内
- 値引きや特別対応を求められたとき
それぞれに「断る理由」と「代わりに案内できること」を一組で書いておきます。この一組があるかどうかで、下書きの使いやすさが変わります。
頼み方の型
材料がそろったら、頼み方です。特別な書き方の技術は要りません。毎回同じ順番で書けば十分です。
誰に・何を・どんな調子で
指示は3つの要素で組み立てます。返信する相手、伝えたい用件、そして文章の調子です。
- 誰に … 初めて問い合わせをくれた方/常連の方/取引先
- 何を … 断る/日程の候補を出す/足りない情報を尋ねる
- どんな調子で … ていねいだが硬すぎない/親しみのある話し言葉
そのうえで、先ほど作った決まりごとの一枚を貼り付けます。「この範囲の情報だけを使ってください」と添えると、余計な補完が減ります。
長さと敬語の程度を指定する
指定しないと、たいてい長すぎる文章が出てきます。読む側の負担になり、こちらの手直しも増えます。
「スマートフォンの画面でひと目に収まる長さ」「あいさつは一行」のように、具体的に伝えてください。文字数で指定してもかまいません。
敬語も同じです。かしこまりすぎた文面は、かえって距離を感じさせます。ふだんの自分の返信を一通貼って「この調子に合わせてください」と頼むのが早道です。
分からないことは、書かせない
いちばん大事な指示がこれです。「渡した情報に無いことは書かないでください」と必ず添えます。
そのうえで、埋まらない箇所は空欄で残させます。「分からない部分は【要確認】と書いて空けてください」と頼むと、確認すべき場所が目で見て分かります。
この指示が無いと、それらしい内容で埋められます。読んだ側には本当かどうか分からず、こちらの確認も抜けます。
埋まっている下書きほど注意が要ります
空欄が無く、最初から完成して見える下書きほど危ないと考えてください。事実かどうかにかかわらず、文章としては自然に整ってしまうためです。「よく書けている」と「内容が正しい」は別のことです。
そのまま送らないための確認
ここからが本題です。下書きは、必ず人が読んでから送ります。見る項目を決めておけば、確認そのものに時間はかかりません。
事実は、決まりごとの一枚と突き合わせる
最初に見るのは事実の部分です。営業時間、定休日、扱っている内容、対応できる範囲。
記憶で確認しないでください。先に作った決まりごとの一枚と、一行ずつ突き合わせます。記憶で読むと、書いてあるとおりに見えてしまいます。
その方の経緯にかかわる内容なら、台帳やカルテも開いてください。前に伝えた内容と食い違うと、話がこじれます。
日付・金額・時間は、下書きに書かせない
日付や金額は、間違えると実害の出る情報です。そもそも下書きの段階で書かせないほうが安全です。
頼むときに「日付・金額・所要時間は【 】のまま空けてください」と伝えます。人が予約の画面や料金表を見て、あとから埋めます。
空いていない日程を提案してしまう事故も、この一手で防げます。空欄のままなら、確認せずに送ることができません。
約束していないことを書いていないか
最後に、約束の有無を見ます。「対応いたします」「ご用意できます」といった言い回しが、勝手に足されていないかの確認です。
- できるとは言っていない対応を、できると書いていないか
- 期限や納期を、確認しないまま書いていないか
- 他店や取引先の状況を、推測で書いていないか
- 謝罪の範囲が、事実より広がっていないか
文章として自然なほど、この種の一文は見落とします。声に出して読むと気づきやすくなります。
誤った内容を送ってしまったら
気づいた時点で、こちらから訂正の連絡を入れてください。届いたときと同じ経路(メールならメール)で、どこが誤りで、正しくは何かを短く伝えます。相手が動く前に届けば、多くの誤りは実害になりません。指摘されるまで黙っているほうが、話を大きくします。
顧客の個人情報を入力しない
出す文章だけでなく、入れる内容にも決まりが要ります。届いた問い合わせをそのまま貼り付けるのは、いちばんやってはいけない使い方です。
名前と連絡先を外してから渡す
問い合わせの本文には、氏名、電話番号、メールアドレス、住所が含まれています。予約番号や会員番号も同じ扱いです。
渡すのは用件の部分だけにします。名前は「お客さま」に置き換え、連絡先や番号の行はそもそもコピーしません。
- 氏名、屋号、会社名は伏せる
- 電話番号、メールアドレス、住所は含めない
- 予約番号、会員番号、注文番号は含めない
- 体調や既往、家族の事情など、聞き取った内容は含めない
個人情報が何を指すかは、一度確かめておいてください。氏名そのものだけでなく、ほかの情報と組み合わせて誰か分かるものも含まれます。扱いの判断が必要なときは、所管の窓口や専門家へご相談ください。
事例は一般化してから渡す
「前にこういうお客さまがいて」という形で相談したくなる場面もあります。ここでも、聞いたままを書かないでください。
年齢、性別、地域、勤務先、来店のきっかけ。これらが重なると、本人が分かってしまいます。「初めての方から、予約の変更について」くらいまで削ってから渡します。
削ると下書きの精度が落ちる、と感じるかもしれません。それでも、精度と引き換えにしてよい情報ではありません。
社内での線引きを決める
自分ひとりで守れていても、スタッフが使えば話は変わります。口頭の注意だけでは守られません。
- どのサービスを使ってよいか(各自が別のものを使わない)
- 入れてよい情報と、入れてはいけない情報
- 迷ったときに誰へ聞くか
- 送る前に、誰が下書きを確認するか
誰がどこまで扱えるかを決める考え方は権限管理と同じです。顧客データ全般の守り方は顧客データの守り方にまとめています。
ここだけは見る
入力の決まりは、紙に書いて見える場所に貼ってください。忙しい日ほど、届いたメールをそのまま貼り付けたくなります。「用件だけを、名前を外して渡す」の一行があるだけで、事故は減ります。
続けるための仕組み
一度うまくいっても、その日限りでは意味がありません。仕組みにするところまでやってください。
採用した返信を、型として貯める
送った返信のうち、うまく書けたものを保存します。次に同じ質問が来たときは、下書きを作らせる必要すらありません。
保存先は、共有できる場所にします。文書ファイルでも、表計算でも、メールソフトの定型文の機能でもかまいません。
型が増えるほど、AIに頼む回数は減ります。これは後退ではありません。手が止まる場面が減った結果です。
担当が代わっても、同じ調子で返せるようにする
返信の口調が人によって違うと、お客さまは戸惑います。型を貯めておくと、この差が小さくなります。
経路ごとの違いも決めておきます。メールとLINE公式アカウントでは、ちょうどよい長さも文体も違います。公式アカウントでの向き合い方はLINE公式アカウントの使いどころにまとめています。
新しく入ったスタッフには、型と一緒に「送る前の確認項目」を渡します。慣れてもらう進め方は新しいツールを定着させる手順と同じです。
決まりごとが変わったら、型も直す
営業時間やキャンセルの扱いを変えたら、型も直します。古い型が残っていると、間違った案内を早く送るだけの仕組みになります。
見直すきっかけを決めておくと確実です。料金や条件を変えた日、季節で営業時間を切り替える日に、型の一覧も開きます。
使わなかった型は削ります。数が多いほど探すのに時間がかかり、結局は使われなくなります。
問い合わせの返信は、事業の印象が決まる場面です。下書きを作らせるのは、文章をうまく見せるためではなく、返すまでの時間を短くするためです。材料をそろえ、頼み方を決め、送る前に人が読む。この順番だけ守ってください。用語は用語集にまとめています。
よくある質問(FAQ)
-
AIが作った返信を、そのまま送ってもよいですか?
勧めません。事実の誤りや、していない約束が混ざります。決まりごとの一枚と突き合わせ、日付や金額は人が埋めてから送ってください。
-
届いた問い合わせのメールを、そのまま貼り付けてもよいですか?
避けてください。氏名や連絡先を外し、用件の部分だけを渡します。予約番号や会員番号も含めないでください。
-
下書きが長くなりすぎます。
長さを指定していないことが原因です。「スマートフォンでひと目に収まる長さ」「あいさつは一行」のように、頼むときに伝えてください。
-
事実と違う内容を送ってしまいました。
気づいた時点で、届いたときと同じ経路から訂正の連絡を入れてください。どこが誤りで、正しくは何かを短く伝えます。相手が動く前なら、実害になりにくいです。
-
スタッフにも使わせてよいですか?
入れてよい情報、使ってよいサービス、送る前に誰が確認するかを決めてからにしてください。紙に書いて貼っておくのが確実です。
-
型を貯めるほど、AIを使わなくなりませんか?
それで問題ありません。目的は手が止まる時間をなくすことなので、型だけで返せる質問が増えたなら、うまくいっています。

